東京近郊から見える西の山

  東京から見える西の山々をじっくり観察したことはありますか? 西の山々は伊豆半島がプレート活動により本州にぶつかり押し上げた地面の「しわ」なのです。下の写真は冬に東京都庁から撮った西の山ですが、17mmの超広角レンズでも収まりきりません。 駿河湾の近くの箱根から群馬の榛名山までの写真です、日本刀の刃文のように美しくないですか? 見る場所により富士山の位置はかなり変わりますが、その他の山の並び方はそんなには変わりません、東京は大気汚染も落ち着ついて都市化による乾燥により、ここ40年なら今が一番きれいに見ることができますよ。
(北の山はこちらから)

西の山


この山(箱根から榛名山まで)をパノラマで撮影した画像で見ていただくと…(画像だけのページ)
(ちなみに方位角は目安程度に考えてください、方位磁石だと「磁北と真北の問題」で北を指す針より真北は7度ほど東側にズレます、アプリのコンパスもそれほど精度はよくないようです)

これをカシミールというソフトで見てみると…(画像だけのページ)

だいたい下記の範囲をうつしています。
西の山

 あまりにもワイドな画像で見にくいので画像をスライドさせています、1都4県の山が写っています。
ちなみに箱根の山、富士山、榛名山が火山で、他はプレートに乗って海から運ばれてきた山と隆起によって形成された山です。関東というのはこの壁のような西の山によって地域が分断されていて、西に行くには箱根をこえる東海道、甲府につづく高尾山と景信山の間を通る甲州街道や大菩薩峠を越える青梅街道、信濃へは榛名山の南側を通り碓氷峠を抜ける中山道など各峠を通る必要がありました(そのこともあり関東は坂東とも言われています)。そしてこの山の中には百名山に数えられる名峰の丹沢山、富士山、大菩薩嶺、両神山、雲取山などがあり、なおこの撮影日は空気も澄んで南アルプスの一部も見えています。
下記の分割した写真は大きさの関係上山の名前が小さすぎて見えにくくなってしまいました、拡大しやすいスマホなどのモバイルの方が見えやすいかもしれません、下記ではその山を南側から紹介します。
西に見える山 google Earth studio版(動画).2

□ 箱根 (神山 1438m)
 下記の写真の中央部に見えて、すこしぼんやりしているのが箱根の山々です、見えませんが相模湾からそそり立っています。箱根は火山の頂上部分が落ち込んだカルデラで、見える山はほとんどが外輪山ですが、一番標高が高いのが神山でこれは中央の火口丘です(下記の動画をみるとなんとなくわかると思います)。ちなみに昔の東海道の徒の旅ではこの箱根を越えていく必要がありました、現在でも国道1号線は箱根を越えるルートとなっています、現在の東名高速道路は箱根の山の北側の谷を通り静岡に向かい、電車の東海道線(新幹線も)は南の海側を通り静岡に向かいます。
東京から箱根の裏側まで(動画)
西の山 西の山
□ 丹沢山系 (蛭ヶ岳 1637m)
 箱根の横に大山がそびえたち立派な姿を見せています、この大山は有名でケーブルカーで登ることができて、乾燥している冬の時期では関東平野、富士山、箱根、相模湾等がよく見えます、この丹沢山系は伊豆半島と同じく南の海での火山でできた地殻だと考えられています。その海洋でできた火山がプレート活動で移動し地下にもぐりこめず残ったこの山々は今でも隆起を続けています。丹沢山系は沢が広くキャンプ場などがたくさんあります、大山、三ノ塔、塔の岳、丹沢山、蛭ヶ岳、よく登山で登られる展望のよい山です。
東京から丹沢の山々の裏側まで(動画)

□ 富士山 (3776m)
 この日本一有名な山も東京近郊からはその姿の半分も見えていません、おそらく5号目か6合目より上しか見えてないのでしょう、北斎の江戸から見る富士はかなりデフォルメされたものです。東京近郊から見るとちょうど左側が静岡県、右側が山梨県となります、この活火山は積層火山といい、その特徴的な姿は素晴らしいです。
東京から富士山の裏側まで(動画)
西の山 西の山

□ 道志山塊 (御正体山 1682m)
 御正体山というすごく立派な山が見えると思います、頂上に展望施設なんかがあればものすごく眺望のよい山だと思うのですが、登ったことがある方に聞いたところ静かであまり人もいなくてよい山だけども頂上からの眺望などはあまりよくないそうです、菜畑山ぐらいまでは丹沢山系とは別な扱いをされることも多い山々です。東京オリンピックの自転車のレースでは東京から道志山塊の横を抜けて(道志坂)、富士山へと向かうという超ハードなコースが設定され、坂を抜けトンネルをくぐり、そびえたつ富士を駆け上がりゴールというコースでした、なんとか開催でき本当によかったと思います。
ちなみに御正体とはかつてここにあった即身仏から名前が付いたとか……
東京から御正体山の裏側まで(動画)

□ 御坂山地 (三ッ垰山 1785m) 南アルプス(東岳 3141m)
 少し奥の方に見えているのが御坂山地です、一番標高が高いのは黒岳ですがよく登られるのが三ッ峠山です、御坂山地は甲府と富士山麓との間を隔てるような山塊で眺望のよいことでも知られていて、ここから見る富士は端正な姿をしています。この写真で右奥に見える白い山塊は南アルプスの東岳(悪沢岳)で日本で6番目に高い山です、ただこの場所は同じ東京でも場所によって南アルプスの違う山が見えて世田谷のキャロットタワーからは塩見岳が見え、羽田空港からは北岳、間ノ岳、農鳥岳が見えます。
東京から三つ垰山の裏側まで(動画)
西の山 西の山

□ 秩父山地 1(高尾山 599m)
 秩父山地は西に見える山のなかで一番多くの山々を構成している山地です、広大なので東京からは手前側の一部分しか見えません。東京からすぐ近くの高尾山なんかに登ったことがある方も多いと思いますが、どれが高尾山なのか分からない方も多いと思いますが実はそんなに高度は高くはなく、スカイツリーより低いくらいです。この写真の中央の高度が落ち込んでいる場所に甲州街道と中央高速道が抜けていきます、場所は高尾山と景信山のあいだくらいです。昔は小仏峠、今は小仏トンネルを抜けます、そしてこの向こうには甲府盆地があります。この景信山というのもすごく見晴らしがよい山です。
東京から高尾山の裏側まで(動画)
西の山 西の山

□ 秩父山地 2(大菩薩嶺 2057m 大岳山 1266m 奥千丈岳 2409m 国師ヵ岳 2592m)
ここからまた高度を上げていき漢字の読み方に苦労しそうですが雁ヶ腹摺山という山があると思います、渡り鳥がその腹をするようにこの尾根を越えていったことから その名がついたといわれています。
そして屏風のような高い山の尾根が見えると思うのですが、これが大菩薩嶺です。この尾根の向こう側は甲府盆地です。途中に切れこんだ痩せ尾根があると思うのですがこれが大菩薩峠で、昔の甲府への旅は甲州街道か青梅街道で青梅街道はこの大菩薩峠を越えての旅でした、今の青梅街道はやや北側を通ってこの壁のような山を回避するルートとなっています、車ではこの山を越えるのは大変だからでしょう、本当に壁のような山ですね。また東京から見ると大岳山が迫力があります、この山はよく雲取山とかんちがいしている方が多い気がします、実はこの写真では御前山と一緒に写っていまして高いのが御前山です。 都庁からは奥千丈岳と国師ヶ岳は見えるのですが、秩父最高峰の北奥千丈岳は隠れて見えないようです。あと日の出山のすぐ横に武蔵御嵩神社が鎮座しております、お札がめちゃくちゃかっいこいいですよ。
東京から大菩薩峠の裏側まで(動画)
東京から大岳山の裏側まで(動画)
西の山 西の山

□ 秩父山地 3(雲取山 2017m 両神山 1723m 武甲山 1304m)
そして有名な雲取山、この山は東京都の山で西の端に位置しています、ちなみに大昔は神奈川県の山でした、なぜ東京都はこの山までの土地を奪ったかというと 、東京都には利根川水系、荒川水系、玉川水系の3つの水系の川があり、そのうち玉川水系の源流がこの雲取山のすぐ横から流れてきているからです、この水利権のために強引に東京都に編入したようです、確かに昔は農地の水の権利の争いがよく発生していたのをよく読みます、首都東京も自前の水利権を確保しておかなければならなかったのでしょう、東京都が西に大きく伸びているのはこのためです。 その横には少しですが百名山の両神山が顔を覗かしています、この秩父山地には修験道が盛んで三峰神社など山の奥や頂上に寺社があることが多いのも特徴です。
ちなみに私が小学生のころ、伊丹行きの日航機が相模湾上空を飛行中にコントロールできなくなり、丹沢山系をさまよい、富士山を回りこの両神山のすぐ向こう側に墜落し、かなりの死傷者が発生しました、子供心に伝え聞いた事故の有り様にショックを受けたのをよく覚えています。
そして武甲山ですが、埼玉の代表的な山で形が少しかわっていませんか?
非常に立派な山だったのですが、セメントの原料を採取するため山を削りこのような形となってしまいした。この向こう側にある長瀞あたりが荒川水系の源です、このあたりの地層はとても不思議な地層でセメントの材料となる石灰石が取れる地層となっています、ということは昔は海の底であった地層です、他にもすごくおもしろい地層が見られる場所なのですが、それは他のHPなどで参考にしてください。
東京から雲取山の裏側まで(動画)    
東京から両神山の裏側まで(動画)
東京から武甲山の裏側まで(動画)
西の山 西の山

□ 榛名山(掃部ヶ岳 1449m)
そして秩父山系から天気が良いと長野の浅間山、群馬の榛名山も望むことができます。これは北の山での紹介となります。
西の山 西の山

□ 総合
なぜ西にこのような壁のような山の峰々が連なるかというと、この箱根の南側にある伊豆半島はフィリピン海プレートの上にあり、北アメリカプレートとユーラシアプレートの本州をものすごい力で押し続けてもぐり込んでいるからなのです。押された本州は褶曲したり隆起したり、もぐりこめずに地上に残ったり(付加体)、箱根や富士山のように地下のプレート活動の熱が大地を溶かし地表に吹きだしたりする活動が今でも進行中なのです。
この三つのプレートの境目のすぐ近くに日本の首都があるというのはどういう意味を持つのでしょう?
歴史的にも度々大きな地震が発生し、度々火山が爆発する危険な地域である気がします、関東大震災も主にこの活動による断層で発生しました。
しかし山はいろいろなものを与えてくれます、例えばこの山々から流れ出る多摩川水系、荒川水系、利根川水系の川は関東平野を潤し、土を運び日本一の平野を形成しました。
古代よりその広大さからだんだんと人口、穀物生産量などが増加していき、平安時代末期には坂東武者たちが西の支配体制を揺さぶり、江戸に幕府を置いたのも東京に遷都したのも必然であったのだと思います、そしていまでは日本の人口の3分の1がこの関東の地に住んでいます。  
   
□ なんでこんなホームページを作ったのか?
 僕は山を見るのが好きなのですが、ではなぜ人はなぜ富士山やこの山々を見ると心が動かされるのでしょうか?(興味もない人も多いのですが、、)その気持ちはどこから来るのか知りたくて4年くらい前に僕は奈良の大神神社を訪ねたりもしました、訪ねたときはそれほどでもなかったのですが帰りしな大和三山を見ると、やはり山には神が住んでいるような印象を強く受けた気がします、ちなみに山の神は女神が多いですね、美しいけど急に噴火したり、吹雪を起こしたりするからでしょうか?世の中分からないことだらけです。
原始には火山活動より洪水のほうが危険は高く平野よりも山際の方が生活がしやすかったのでしょうが、これが一般的な日本人のDNAに組み込まれている習性なのでしょうか?
世の中不思議なことだらけです。
 
 

□ 東京から山を見るのであれば
 西の山を見るのであれば都庁展望台はおススメです、新宿より西は高層ビルも少なく西の山々の見え方が屏風の絵のように見ることができます、そして何がいいかというと「タダ」なんです!ピアノの演奏も聞けます感動的な演奏から不思議な演奏家まで面白いですよ、スカイツリーも渋谷スカイもいいんですけどね……お値段がね  
あと都内でおすすめとしては、練馬区役所、船堀タワー、文京シビックセンター、北トピア、恵比寿ガーデンプレイス、キャロットタワーなどがおすすめ「無料」スポットです。12月から2月くらいまでの間で快晴、温度5度以下湿度30%以下、早朝から12時くらいがちょうどよく遠くまで見えます、ただ早朝は靄(もや)がたつことも多いんですよね。あとせっかく渋谷スカイに見に行ったけどあんまり見えなかったという方がいましたが、お出かけ前に「東京都大気情報 富士山カメラ」で検索すると、都庁からの富士山の見え方がライブで見ることができるのできれいに見えることを確認できてからお出かけをするのがいいかもしれません。 
 
□ 問い合わせ
最近メールでこの山なんでしょうか?という問い合わせが多いです。 だいたいは答えられるのですが、私よりも詳しい方もいらっしゃるでしょう、 掲示板を作りましたので問い合わせ、感想などなんでもお寄せください。

 

令和3年2月1日 
A.hideya

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